積もった傷

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私は、幼い頃から両親に信用されていなかった。

子どもの頃の楽しみは、母親が時々くれる100円を持って近所の駄菓子屋さんに行くことだった。

その100円でいつもはお菓子を買うのに、その日はなぜか100円を入れてハンドルを回すと、カプセルに入った玩具が出てくるガチャポンという商品を買った。

カプセルの中からは、小さなピアノ型のポシェットが出てきた。

幼い私は、嬉しくて、それを肩から斜めにかけて家に持って帰った。

家に着くなり、私の姿を見た母親が血相を変えてこう言った。

『そのポシェット何処で盗んできたの?』

『盗んでないよ。ガチャポンで出てきたんだよ。』

『レシートは?』

『ガチャポンは、レシートは出ないの。』

その事件はすぐに父親に報告された。

私は無理やり車に乗せられて、いつもの駄菓子屋さんに連行されることになる。

『すいません。うちの子がこのポシェットを盗んだみたいで』

大泣きする私の姿を見た駄菓子屋のおばちゃんは、それは100円を入れないと絶対に出てこない商品だから盗んでないと説明してくれて、やっと冤罪が証明された。

そういう事件が、度々あったのだ。

私は、だんだん両親に自分の事をなにも話せなくなっていった。

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